第20代延岡市医師会会長を仰せつかりました佐藤信博(あたご整形外科理事長)でございます。私達新役員は令和2年4月の延岡市医師会臨時総会で任命され、6月25日より就任いたしました。また、副会長には平野雅弘先生(平野消化器科院長)と赤須郁太郎先生(延岡共立病院院長)に就任して頂きました。理事には引き続き山口哲朗先生(県立延岡病院副院長)、金井一男先生(延岡リハビリテーション病院院長)、榎本雄介先生(大貫診療所院長)、大重明広先生(大重産婦人科理事長)、市原久史先生(谷村病院)の5名の先生方と、新たに竹原俊幸先生(おがわクリニック院長)、日髙利昭先生(北浦診療所所長)、安藤誠先生(桜小路クリニック院長)、井上英豪先生(いのうえ整形外科クリニック院長)の4名を含め総勢12名の執行部で難題に立ち向かって参る所存でございます

 

昨年の暮れに流行が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により世界中が困難な状況になっています。幸い、宮崎県では大きなクラスターやパンデミックは発生しておりませんが、いつ大きな感染が発生してもおかしくない状況にあります。

延岡市医師会としましては新型コロナウイルス感染症の発生状況に応じて柔軟に対応していく所存でございますので、延岡市医師会会員並びに市民の皆さまのご協力をお願い申し上げます。

 

まず初めに、延岡市医師会が行っていることをお伝えします。大きな事業として

➀医師会病院、②延岡市夜間急病センター、③延岡市看護専門学校の運営があります。

また、延岡市医師会には23の委員会があり、市民の皆様が安心して暮らしていけるための業務を請け負っています。例えば、小学校から高等学校までの学校健診、心臓・腎臓検診、特定健診、がん検診、各種予防接種、災害時の医療対応、医療・介護・福祉の連携など、どれが欠けても困るものばかりです。行政と協力しながら遅滞なく業務を遂行しているところです。皆様のご協力・ご理解をお願い申し上げます。

 

 『新しい生活様式』順守へのお願い

6月19日には国からの県をまたぐ自粛が全面的に解除されました。県内では感染者がまだ少ないと安心しがちですが、新型コロナウイルスがいなくなったわけではありません。感染の危機は1月から3月までの発生初期と大きな変化はありません。第2波、第3波が起きる可能性は常につきまとっています。

新型コロナウイルス感染症の感染率は、サーズ(SARS:重症呼吸器症候群)やマーズ(MERS:中東呼吸器症候群)に比較して低いといわれています。しかし、新型コロナウイルス感染症がこれまでの感染症と全く異なる重要な点は、感染者の症状が出る前に他人に感染させてしまうという事です。これまでのウイルス感染症は症状が出てから他人への感染力を発揮するので、症状を出た人を閉じ込めれば感染を終わらせる事に成功していました。しかし、この新型コロナウイルス感染症は、症状が出てから閉じ込める方法では感染の拡大を止めることはできないのです。皆様へ常日頃からマスクの着用が求められているのは、感染して症状が出る前の無症状期(感染者が感染していると気づかない時期)に感染を広めないようにするためです。

新型コロナウイルス感染症に対し安心できる状態になる(終息する)には、①有効な治療薬ができる、あるいは②この感染症に感染し抗体ができた人あるいは開発されたワクチンが接種され免疫が得られた人が人口の7割に達する(いわゆる集団免疫ができる)ことが必要です。ワクチンができていない今の状況で人口の7割が抗体陽性になるには、日本では1億2000万人の人口の7割すなわち8,400万人が感染する必要があります。感染者の死亡率が約5%ですから、その間に420万人が亡くなることになります。この計算を延岡市に当てはめてみましょう。延岡市の人口を12万人とすると、84,000人が感染し、4,200人が亡くなることになります。このようなことは絶対に起きてはなりません。そのためには特効薬かワクチンが皆さんに行き渡り安心できる状態になるまで、全市民が感染しないように持ちこたえることが必要なのです。

 

現在、経済状態が悪化し、感染防止と社会経済活動の両立が必要な状況になっています。街は賑わいを取り戻しつつあります。しかし、社会経済活動を再開するにあたり注意して、守って頂きたい事があります。

それは『新生活様式』です。よく耳にされるので、ご存知だとは思いますが、自ら実践している人はまだ少ないように感じます。

エレベーターやお店の中で、大声でお話ししている方をよく見かけます。お酒が入るとお話が止まりません。また、レジなどで順番待ちをしている時に、ソーシャル・ディスタンスが守られてない場面を見かけます。さらに、マスクをしてない方も時々見かけます。

 

➀「3密(密閉、密集、密接)」を避けましょうと言われていますが、3密の何がいけないのでしょうか?

3密は「換気の悪い密閉空間」、「多数が集まる密集場所」、「間近で会話や発声する密接場面」です。狭い場所に大勢いることがいけないのでしょうか? 実は3密そのものが悪いのではなく、3密状態での人々の行動がいけないのです。この3密の状況下で感染を生じる経路は飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は人が声を発するときにウイルスを含んだ唾液が飛んで、相手に感染させるわけです。したがって、飛沫感染を防ぐには声を発しないこと。これが一番です。どうしても声を出すときには、マスクを着用した上で、相手との距離(ソーシャル・ディスタンス:最低1メートル、出来れば2メートル)を保ちましょう。エアロゾル感染(飛沫核感染:5ミクロン以下の大きさの唾液からの感染)の可能性もあるので、換気ができる場所では十分に換気をしてください。また、接触感染(ウイルスが付着している物を触り、その手で目や口などの粘膜に触ることで感染する)を防ぐためには自分の手指消毒と環境消毒を頻回にすることが必要です。

 

②    マスクの着用:マスクの着用は自分が感染しないためではなく、他人に感染させないための大切な作法です。外出時・屋内にいる時や会話をするときには必ずマスクを付けて下さい。

 

③ ソーシャル・ディスタンスを守りましょう:ソーシャル・ディスタンスはお店が決めるものではありません。印が無い場所でも一人一人が自分達で守っていくべきものです。お店に入ったら一人一人が距離を保って下さい。特に会計などで並んで待っている時に!

 

④ 手洗い・手指消毒をこまめに:飛沫感染より接触感染の方が多いと言われています。自分の為にも人の為にも、手を使ったら手洗いや手指消毒を積極的に丁寧にお願いします。

 

⑤お店の方へのお願いです。

・入館時の検温(15分以上滞在するような場所)

・手指消毒薬の設置

・多くの方が触る場所を頻繁に消毒する

・従業員へのマスクやフェースマスクの着用(お客様への注意喚起を促す)

・定時的な換気(30分おきに5分、または1時間おきに10分間窓を開ける)

・アクリル板やビニールシートの設置

・『静粛に』『声を発しないで』などとの案内を目立つように複数個所に設置する

・飲食店では『お静かに、集中して当店自慢の料理をお味わいください』などと表示する

・レジなどで順番待ちが発生する場所では、立ち位置を示すシートを床に貼る

 

エレベーターやお店の中などの密な状況下では、声を発しないようにお願いします。また、順番待ちをしている時に、店から立ち位置の指示がない場所でもソーシャル・ディスタンス(人と人の距離を1メートル以上保つ)を守りましょう。

 

 延岡の医療体制は盤石ではありません。毎日2~3人の感染症が出るとかなり大変な状況になり、毎日10人以上になれば、医療崩壊を起こしかねません。指定医療機関になっている県立延岡病院と延岡市医師会は連携して治療に全力を尽くしますが、多くの医療従事者が罹患するような最悪の場合は医療機関そのものが機能しなくなります。

 延岡を新型コロナウイルス感染症から守るためには、市民の皆様一人一人の努力が必要です。全市民の協力がなければ、延岡は安全な街になりません。どうかご理解・ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

 

 

❷ PCR検査について

 延岡市と延岡市医師会は協力して新型コロナウイルス感染症対策を行っています。既にPCR検査の検体採取を開始しましたが、夏にはPCR検査自体も延岡市で検査できるようになります。発症が疑われる場合には保健所(県内統一の電話番号:0985-78-5670)あるいは医療機関に電話でご相談ください。直接医療機関へ受診することは、待っている患者さんや医療従事者への感染を広める可能性もありますので、避けてください。必ず電話で事前にご相談ください。どの様に受診すれば良いのか適切に指示いたします。よろしくお願いします。

 

❸ 延岡市医師会病院に関して

 延岡市医師会病院は昭和42年に開設した宮崎県で最初の医師会病院です。平成16年に現在の地(延岡市出北6丁目)へ新設移転し、かれこれ16年が経ちました。

 これまで医師会病院は2病棟(108床)でしたが、令和2年1月より1病棟(55床)になりました。原因は夜勤ができる看護師さんが少なくなったためです。大変ご迷惑をお掛けしていますが、晩夏には2病棟に戻す予定で日々努力していますので、今しばらくお待ち下さい。

 

❹ 市内の医療機関へのご支援のお願い

 また、医師会員の医療機関も今回の新型コロナウイルス感染症で甚大な被害を被っています。一つは風評被害です。延岡市でもPCR検査で陽性の方が出ましたが、医療機関や医療従事者への差別・偏見などがSNSで炎上したように聞いています。皆様が感染したときに皆様を守り助けるのは医療です。風評被害のため医療従事者が辞めてしまえば、医療機関は成り立ちません。ぜひご理解ください。

二つ目は患者数の減少です。皆様の感覚では医療機関は豊かな財源に恵まれているとお考えでしょうが、新型コロナウイルス感染症の発症以前からやっと黒字という医療機関がほとんどです。そんな中での外来・手術の減少ですから、今後の医療機関の行く末が心配です。

各医療機関は新型コロナウイルス感染症への対策を十分に講じておりますので、安心して来院していただけます。

皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。

                                                                                                  延岡市医師会会長

                                                                                                                  佐藤信博